日米金利差では説明できないドル円相場の変動と日米マネタリーベース比率との関係
短期的な視点から、為替相場に影響を及ぼすものとして金利がある。図表⑤のように、ここでは金融政策と関連が深い2年債の金利の動きを確認しておく。これは、金利が高い方の国の通貨を買うという行動を反映している。
2.対ドル為替レートはインターバンク直物中心相場。対ユーロ為替レートは ..
こうした点を踏まえると、2017年~2022年初めまでの局面と足元を比べると、マネタリーベース要因が円安・ドル高圧力を生み出しているとは言いがたい。
円安が進んだ2022年以降は、マネタリーベース比率はおおむね横ばいで推移している。日本もイールドカーブ・コントロール(YCC)導入後、量ではなく、金利が主な政策手段になっていることもあり、相対的な関係に大きな変化はみられない。また、米国も感染拡大直後に資金供給を拡大したものの、次第に縮小している。2023年になってから、米国が3月の金融不安の高まりによって結果的に資金供給を拡大した中で、日本も2022年12月にYCCの運営上の柔軟化を行った後、長期金利の上昇などを抑えるため、国債買い入れの増額などによって資金供給を拡大させたため、マネタリーベース比率は大きく変わらなかった。
マネタリーベースとは?マネーストックとの違いもわかりやすく解説
物価上昇率が安定している場合や、物価上昇率の変動が大きな影響を及ぼさないような短期売買の場合などでは、名目金利差で為替相場の動きを判断することで十分なのかもしれない。しかし、実際のビジネスにおける実需という視点からは、物価上昇率を考慮した実質金利で考える必要がある。
図表④のように、日本と米国のマネタリーベース比率をみると、2017年以降のレンジ相場の時期は、2つに分けられる。一つ目は、マネタリーベース比率が低下した新型コロナウイルス感染症の拡大前の時期だ。このとき、米国ではバランスシートの縮小が実施されたこともあり、日本の金融政策が相対的に緩和傾向にあり、円安・ドル高圧力になっていたと考えらえる。その後、二つ目の時期となり、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、米国が金融政策を緩和方向に大きく舵を切ったことで、マネタリーベースが拡大、その比率も上昇し、円高・ドル安圧力になった。
[PDF] (年金運用):量的質的金融緩和政策下における金利・為替動向
中期的な時間軸で為替相場に関連する金融政策について、マネタリーベースの動きを確認しておく。日本のマネタリーベースが相対的に拡大している時期には、より強い金融緩和政策がとられているため、円安・ドル高圧力になるとみられる。
2023年の購買力平価は、円相場が狭いレンジで推移していた2017年以降のレンジ相場の時期と比べると、やや円高・ドル安方向にあり、為替相場に円高・ドル安圧力をかけているとみられる。このため、購買力が足もとの円安・ドル高を生み出しているわけではない。
はじめに日米中央銀行のマネタリーベースの推移を図表1に示した。 ..
図表②のように、購買力平価は緩やかに円高・ドル安方向に推移している。これは、日本の物価上昇率が米国の物価上昇率よりも低いため、日本の通貨価値が相対的に低下していないことを表している。これはあくまで長期的な為替相場のよりどころであるため、実際の為替相場からは外れることが多い。事実、2021年第4四半期以降の円安・ドル高局面は、購買力平価の動きから外れている。
次に、為替市場にボラティリティをもたらすとみられる、いわゆる投機筋の動向を確認しておく。図表⑥のように、米商品先物取引委員会(CFTC)によると、投機筋(非商業部門)のドル円の取引のポジションは、2017年以降のレンジ相場の時期も足元も、円の売り越し超である。新型コロナウイルス感染症拡大後に一時的に買い越し超に転じたものの、2021年Q2以降には再び売り越し超で推移している。2022年Q2以降、円安・ドル高が進んだものの、投機筋の動きが2017年以降の円相場の安定局面と大きく異なっているわけではない。当時も足元も売り越し超であり、その金額も10万枚(1枚=1,250万円)程度が上限になっている。
裕大 / 執筆現在のドル円レートは1ドル=159円台で推移している(最新のドル円 ..
こうした変化の背景には何があるのか。以下では、為替相場を考える上で経済のファンダメンタルズの視点などから、円相場が安定していた2017~21年のレンジ相場の時期と、2022年以降の円安・ドル高の時期を比較してみる。
髙橋洋一「目からウロコ!為替の仕組み ~この円安って大丈夫?~」
過去を振り返ると、新型コロナウイルス感染拡大前の2017年から2022年初め頃まで、円相場は狭いレンジで安定的に推移していた。年間の振れ幅が10円を下回る年もあったほどだ。しかし、2022年になると一転して円安・ドル高が進み、10月には1ドル=150円台を下回り、1990年8月以来約32年ぶりに円安・ドル高水準を記録した。その後も、円相場は2021年以前のような安定したレンジに戻っていない。
金利差では説明できないドル円相場の変動と日米マネタリーベース比
為替相場を考える上で、複数の要因を考慮する必要がある。また、それぞれの要因が為替相場に影響を及ぼす時間軸も異なっている。もちろん、外部環境次第で、その要因が効果を生み出したり、生み出さなかったりすることがあるため、複数の要因をそれぞれの局面で判断する必要がある。そこで、2017~2022年初めのレンジ相場の時期と、2022年以降の円安・ドル高の時期の2つの時期について、円相場に影響を及ぼし得る要因を比べてみた。
米国のマネタリーベースの最新データを速報で掲載しています。 マネタリーベースは、中央銀行が世の中に供給するお金の総量(資金供給量)です。
対ドルの円相場は8月17日に1ドル=146円台半ばを付け、2022年9月22日に政府・日本銀行が円買い・ドル売り介入を実施した145円90銭を下回った。図表①のように、対ドルの円相場は7月28日の日銀の金融政策決定会合後の138円前後から円安・ドル高方向で推移している。
11月マネタリーベース(8:50) 10年国債入札《決算発表》 内田洋
しかし、多くの国で利上げが行われている中で、金融緩和を維持しながら、円安になるのを抑制しようとすることは、容易に達成できる政策目標ではありません。外国での利上げやそのペース(あるいはそれらに対する期待)に変化があれば別ですが、そうでもない限り、基本的には国際金融のインポッシブル・トリニティー(自由化資本移動、独立した金融政策、安定した為替レートの同時達成の不可能性)が作用するはずだからです。今回の財務省と日本銀行の政策対応は、極めて困難な課題に挑戦しようとしたように思えます。
マネタリーベース(11月) : 日本銀行 Bank of Japan
さらに言うと、10年物国債金利が9月からではなく、3月末から上昇していたことを見ると、日本銀行は、財務省が為替介入をする以前から円安抑制策を打っていたとも言えるように思います。
インフレ期待上昇・実質金利低下(さらに対ドル5円程度の円安要因)
この意味するところは、財務省の為替介入に際して、日本銀行は、その影響を不胎化しないことによって、それを側面支援したということのように思えます。金利が上昇することを許容することによって、資本流出圧力を抑制し、円安に歯止めをかけようとしたのです。
大規模な量的緩和の本質は、FRBのマネタリーベース供給速度を凌駕して、円高の是正を図ることだったと見られる。
図表⑦のように、外国為替証拠金取引(FX)のドル円の取引金額は膨れ上がっている。この点は、2017年以降のレンジ相場の時期と足元では大きく異なっている。また、ドル円の店頭取引月末建玉残高(「売建」-「買建」)をみると、2017年以降では買い越し超が継続していた一方で、2021年後半から売り越し超になる月が増えはじめた。また、円相場が約32年ぶりの円安・ドル高水準を付けた直前の2022年8~9月も売り越し超だった。2023年になっても、4~6月は売り越し超だった。7月は888億円の買い越し超に転じたものの、2017年以降のレンジ相場の時期に比べると、月末残高の買い越し超は少額だ。この分だけ、円安・ドル高圧力が高まっていた可能性がある。
円のドルに対する購買力平価は概ね105~115円と推計されている(図表1 ..
マネタリーベースが減少しているという事実は、ある意味では不思議です。もし日本銀行が金融緩和を維持することを目的としているのであれば、ドル売り・円買い介入によるマネタリーベースへのマイナスの影響を不胎化する(打消す)ために、資産買入等を行って日銀当座預金残高を回復させるはずです。もし不胎化しなければ、金融引き締め効果をもたらしてしまうからです。
ソロスチャートが示す黒田緩和の円安効果、迫る日米マネー量の逆転
影響するはずです。より具体的には、民間から外国為替資金特別会計への資金の移転は、預金残高の民間から政府への移転を介して、日本銀行当座預金残高に影響を及ぼすはずで、その日本銀行当座預金残高はマネタリーベースの一部を構成する以上、マネタリーベースにも影響を及ぼすはずです。実際、マネタリーベースを見ると、本年5月から減少傾向にありましたが、特に9月と10月の減少は大幅なものになっています(図表5)。
日本のマネタリーベースと日米マネタリーベース比(月次, PDF)
為替介入のために米ドルが売却されると、政府はその対価として円を受け取ることになります。実際、外国為替資金特別会計の民間からの受取超過額が9月に3兆211億円、10月に6兆円4902億円となっています(図表4)。
マネタリーベースと通貨変動は、全く別の動きを見せる可能性がある」と指摘する。 ..
冒頭で書いたように、今回の為替介入は、円を買い、米ドルを売るものでした。通貨当局が米ドルを売るとすれば外貨準備を取崩すしかありません。外貨準備の残高やその内訳は、保有証券の評価額やそれからの利子受取にも影響されるので、介入の原資を特定することは容易ではありません。しかし、外貨準備の変化の方向やその規模からすると、為替介入のための外貨は、外貨準備のうちの証券(多分、米国債であると思われる)の売却によって賄われたものと考えられます(図表3)。
マネタリーベースの増加は、貨幣乗数倍のマネーストックを生み出す ..
実際の資金フローという観点からは、直接投資から「収益の再投資」(第一次所得収支の再投資収益に相当)を差し引く必要がある。それをみると、2017年以降のレンジ相場の時期に平均2兆円強だったものが、2022年以降には平均2兆円弱とやや勢いを欠いている。これは、円売り・ドル買い圧力の低下を意味するため、足元の方が円高・ドル安方向に円相場が推移しやすくなるものの、金額からしてあまり大きな影響ではないようだ。
[PDF] 国土交通政策研究所 第177回政策課題勉強会 概要
財務省によると、為替介入の規模は、9月22日は2兆8382億円、10月21日及び24日は6兆円3499億円に達したとのことです(図表2)。この規模は、2011年11月における介入額には及びませんが、1998年6月のドル売り・円買い介入時のそれを大幅に上回るものとなっています。